
血管外科
血管外科
「人は血管とともに老いる」という言葉があります。その言葉通り、血管の加齢性変化としての動脈硬化は、人口の高齢化に伴い、患者数も増加の一途をたどっています。動脈硬化が進行すると、血管壁に固いところや、もろいところができ、内部にプラーク(粥腫)が形成されます。細い血管は、プラークの形成により内腔が狭くなる「狭窄」や、つまってしまう「閉塞」を来し、胸やおなかなどの太い動脈(大動脈)では壁の弱いところが膨れる「動脈瘤」を形成します。脳の動脈が閉塞すれば脳梗塞、心臓の動脈が閉塞すれば心筋梗塞となり、これらの病気を発症すると時に命に関わりますし、そうでなくても生活の質が落ちるため、動脈硬化の予防が大切です。動脈が膨れてできる動脈瘤は、多くの場合無症状で経過しますが、もとの直径の3倍以上に膨れた場合、動脈瘤破裂を来し命に関わってきます。下肢の動脈の閉塞や狭窄は閉塞性動脈硬化症といわれ下肢の血行障害により歩行障害、しびれ、痛みを呈し、進行すると足の先から紫色や黒色に変化し腐って壊死に陥ります。動脈硬化は長年の生活習慣病として徐々に進行しますが、動脈の内側の壁に亀裂が入ってそこから動脈が裂ける大動脈解離や、心房細動という不整脈により心臓にできた血栓が血流に乗って飛んで行って生じる急性動脈閉塞など、急を要する病気もあり、早期の診断と適切な治療が必要となります。
一方、静脈の病気では、下肢の静脈が膨らむ下肢静脈瘤は、妊娠出産後の女性の方や長時間の立ち仕事の方によく見られます。静脈のところどころにある、逆流防止弁の働きが悪くなって、血液が下にさがっておきる病気です。軽症であれば何もしなくてよいのですが、重症では静脈瘤に対する外科手術の対象となります。またエコノミークラス症候群といった名前で知られる、深部静脈血栓症は、長時間足をおろしてじっとしていたり、血栓ができやすい体質であったり、血栓ができやすくなる薬(経口避妊薬やステロイド、向精神薬など)の影響で、下肢の静脈内に血栓が生じて、急に静脈が閉塞する病気です。足がパンとふくれたり、また足にできた血栓が心臓に飛んで行った場合、肺動脈が血栓でつまる肺動脈血栓塞栓症(肺梗塞)を引き起こし生命に関わることが知られています。その場合、血栓を溶かして血液をサラサラにする抗凝固療法の継続や弾性ストッキングの着用が必要です。血管の病気でお困りのことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
その他、お悩みや困りごとがありましたら、何でもお気軽にご相談ください。
主に足の血管に起こる動脈硬化で、末梢動脈疾患とも呼ばれています。足に冷感やしびれ、歩行時に痛みを感じる、という症状があり、重症化すると手足に潰瘍ができ壊死することもあります。特に50歳以上の男性に多い傾向があり、肥満・高血圧・糖尿病・喫煙などが原因と考えられています。閉塞性動脈硬化症を発症した場合には、下肢動脈だけでなく全身の血管も動脈硬化が進んでいる可能性が高いので注意が必要です。
動脈硬化の危険因子を有する方は、検査で動脈瘤がみつかることがあります。CT、MRIなど必要な画像診断を依頼し、的確に診断し、治療方針を決定します。人工血管置換術後の方、ステントグラフト挿入後の方にも対応いたします。
歩行時の下肢の疼痛、安静時の足の疼痛、壊死などの症状が、下肢動脈の狭窄や閉塞が原因となっていることがあります。四肢血圧脈波検査で動脈硬化の進行具合がわかります。下肢の動脈エコー検査を行い、必要であれば血管造影や、造影CT検査を依頼し、病変の部位、進行具合から治療方法まで診断します。また頸部動脈エコー検査では、動脈の狭窄や閉塞の有無、脳梗塞のリスクを調べます。
近隣では数少ない、下肢静脈瘤外来を行っています。足の静脈瘤が気になる方、足のむくみ、足がだる重い、足がつる、足の潰瘍、湿疹、色素沈着などでお困りの方。下肢静脈エコーで診断し、最適な治療を行います。当院では、下肢静脈瘤を悪化させにくくする日常生活指導、弾性ストッキングの採寸や正しい履き方説明、下肢静脈瘤硬化療法高位結紮などの外科治療を行っています。
下肢の静脈にできた血栓が肺塞栓を引きおこすのが、エコノミークラス症候群として知られていますが、これまで検査をしないと見落とされがちな疾患でした。当院では迅速検査で血液Ddimer検査が可能ですので、そこでスクリーニングをかけ、必要に応じて、下肢静脈エコー検査を行い、正確に診断します。過去に深部静脈血栓と診断された方、急性期病院で抗凝固療法を開始され継続中の方や、下大静脈フィルター留置を受けた方など、ご相談いただければ、治療継続の要否、抗凝固療法の利点欠点などに鑑みて、適切に対処いたします。